2019年2月27日水曜日

『アルハイラト・ジャンビア』第2章_33

 アジャリアの裏が見えていたのはカウシーンばかりではない。クウェート侵攻を持ち掛けられたファリドも、クウェートはアジャリアがエルサレムに上るための最初の拠点にするつもりなのだと気付いた。
 レイス軍の主な城邑アルムドゥヌ ナーシリーヤ、ほぼ一点である。このレイス家の勢力を潰さずに保つには、フサイン家もしくはアジャール家の力を借りるしかなかった。そして二つを天秤にかけた結果、新興勢力のフサイン軍より、安定した強さを誇るアジャール軍を拠所としてアジャリア・アジャールの方を選んだというわけである。
「どうせアジャリアは我等にクウェートの半分すら分け前をくれる気は無いのだ。我等はアジャール軍という砂避けが手に入れば上々」
 とファリドは大して気乗りもしないクウェート侵攻に一応付き合ってやるつもりでいる。
「まったく。この寒い中に軍など出さなくてもいいのにな」
 馬上でポアチャを齧りながら、大欠伸するファリド。まるでやる気が無かった。

※ この物語はフィクションであり実在の人物団体とは一切関係ありません。

次へ進む
https://karabiyaat.takikawar.com/2019/02/A-Jambiya2-34.html

【創作活動における、ご寄付・生活支援のお願い】
https://karabiyaat.takikawar.com/2019/01/kihu.html

前に戻る
https://karabiyaat.takikawar.com/2019/02/A-Jambiya2-32.html

『アルハイラト・ジャンビア』初回に戻る
https://karabiyaat.takikawar.com/2018/11/A-Jambiya11.html

0 件のコメント:

コメントを投稿