2019年2月18日月曜日

『アルハイラト・ジャンビア』第2章_24

 末子は成功するという処世の型のようなものがある。過酷な環境に置かれるか、あるいは日進月歩、歩みを止めない親にとっては時に晒される事自体が進化と言って良く、齢を重ねる程実力を身につけてゆくのは道理である。よってこの型の親が子に遺せる才能の恩恵は、若年に出来た子よりは、末子に至る程大きくなると言えるのである。
 バラザフの場合は正確には末子ではないが、この型に照らすならば兄達より成功する可能性は大いにあるのである。だがこの若者には手柄は有っても未だ世に顕現する成功は無く、自覚も無く、父エルザフのみが先に来るであろう光を見通していた。
 アンナムルはとある寺院の香壇にて、一人乳香アリバナ に包まれた生活を送っていた。
 彼は父を諌めた事が、自身の善心の発揚であると疑わない。父の無道を正すこの事自体、父アジャリアの影響を受けての行動だと言えなくも無かった。とはいえアンナムルは父アジャリアの髄が本当に無道であるとは思っていない。
 副官アルムアウィン のヤルバガ・シャアバーン等、自分に賛同してくれる多くの家来達を死なせてしまったが、時が経てば賢君である父の事である。自分の主張を十分に斟酌してくれるはずであった。
 アンナムルの篭る香壇に足音が近づいてきている。
「ようやく父上もご理解下されたか」
 迎えの者が来た喜びで身も心も大いに軽くなった。
 扉が開かれ振り向いたとき、アンナムルは迎えの者と差し込む光と、そして抜き放たれた刃を見た。
 アンナムル・アジャールの名はカラビヤートから消えた。

※ この物語はフィクションであり実在の人物団体とは一切関係ありません。

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