2019年2月28日木曜日

『アルハイラト・ジャンビア』第2章_34

 バラザフ・シルバの城邑アルムドゥヌ ヒジラートファディーア――。
「アジャリア様のサバーハ家救済を偽善だと言う者も少なからず居る。正直俺もあれは建前だと思う。だがその先にアジャリア様の大宰相サドラザム という夢があるとすれば、俺はそれをお支えしたい」
 と家門まで抱いて連れてきた、まだ話も分からぬ幼い二男のムザフを降ろし、見送りについてきた長男サーミザフ、二人の息子の頭を撫で、父バラザフは馬に跨り戦場へ向かった。遠くはなれ小さくなる父の背を二人の息子はいつまでも見送り、父の姿が見えなくなってもなかなか家へ入ろうとはしなかった。
 見兼ねた母が二人に入るよう促したが、そうした彼女自身、後ろを振り返り、夫の無事を祈り、胸を強く痛めているのであった。母子を包む冬の風は冷たい。

※ この物語はフィクションであり実在の人物団体とは一切関係ありません。

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