2019年2月19日火曜日

『アルハイラト・ジャンビア』第2章_25

 カーラム暦990年、身内に火種を揉み消してすぐにアジャリアは、クウェート攻略作戦の開始を命じた。これとほぼ同時期にシルバ家ではバラザフに長男が誕生した。遠くバグダードでは後に大宰相サドラザム となるファイザル・アブダーラが同年、この世に生を受けている。もっとも彼はこの時点ではまだ貧しい平民レアラー で歴史の主道に乗ってはいない。
 シルバ家の長男の方は、サーミザフと名づけられた。今後、カトゥマル・アジャールの長男シシワトと共に成人を迎える。そして、サーミザフはファリド・レイスの家来に加わるという数奇な運命を辿る事になる。数奇といえば、この乱世に生きる全ての人間が数奇な運命に翻弄さてゆくのだが……。
 新しい世代が生まれると同時に旧い世代は年老いてゆくのが世の道理である。孫が生まれたのを機にエルザフは、
「私も五十を越えました。そろそろ当主の座を明け渡そうと思います」
 とアキザフを当主にして隠居を家中に宣言すると同時に、主家のアジャリアにもこの旨を願い入れた。
 アジャリアも、
「わしの目から見てまだまだシルバ家にはエルザフを越える謀将アルハイラト は出ていない思うが、無理を強いるわけにもいくまい。大事が起きた時はまだまだアジャール家を援けてくれよ」
 と思いを置きながらもエルザフの引退を認めた。アジャリアの思考もすでにシルバ家の知謀を抜きには考えられぬ所まできていた。
 バラザフの才を好いて近侍ハーディル に取り立て、賞賛も絶やさないアジャリアだったが、実の所はまだ彼を実成した将とは見ていないのである。

※ この物語はフィクションであり実在の人物団体とは一切関係ありません。

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