2019年2月4日月曜日

『アルハイラト・ジャンビア』第2章_10

 エルザフもズヴィアド同様アジャール家の新参である。実績を示しながらも言動に派手さの無いズヴィアドにエルザフは好感を持った。
 知恵者というものは一つの発想が浮かぶと、それを他人に話してみたくなるものである。もちろん貴重な作戦情報を敵に漏らす事が出来ないのは言うまでもなく、味方であっても愚者であればそもそも会話が成立しない。よって知恵者はいつもこういった欲求不満を抱え込んでいる。
 自分から生じた知恵の実を他者と分かち合えるのは、毛色の似通ったエルザフにとってもズヴィアドにとっても喜ばしき事であった。
「智将エルザフ・シルバに我が得意とする所を認めていただき嬉しい事です」
「こちらこそズヴィアド殿の城邑アルムドゥヌの要諦の教授を受ける事が出来、非常に有り難い事です」
 ここに早くも謀臣達の連合カラテルが出来上がりつつあった。
 アジャール家に仕えるようになってからズヴィアドはブライダーやラフハーの街の城邑アルムドゥヌ改築を任されている。ズヴィアドの築城方式はアブドゥルマレク・ハリティ、エルザフ・シルバ、エルザフの子バラザフに伝授され、エルザフからバラザフに対しても同様の伝授がなされた。
 後にバラザフは、
 ――バラザフ・シルバが城を建てれば難攻不落。
 と世人に称えられる事になるが、その起源はこのズヴィアドと父エルザフに在る。アジャール家で最たる築城の巧者と評価されたという事は、すなわちカラビヤートで一番の城邑アルムドゥヌ名人と絶賛されたといってもよい。

※ この物語はフィクションであり実在の人物団体とは一切関係ありません。

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