2019年1月18日金曜日

『アルハイラト・ジャンビア』第1章_22

 タブークから出たベイ軍本隊は現在八万。ジャウフの街の部隊と合流しようとしていた。濃霧はアジャール軍だけでなく、ベイ軍の進軍も慎重にさせた。しかし、タブークの奇襲を未然に回避したサラディンも、この時点では濃霧の向こう側にアジャール軍の稲妻バラクが配置されているとは想定していない。
 アジャール軍とベイ軍とは互いに一日で行ける距離にまで縮まっていた。極めて近い。
 ついにサラディンの耳に偵諜から情報が入れられた。
「ジャウフの街の北側に布陣が見えます。数は十万から十五万」
「アジャール自身が出てきたか。それで陣容はわかったか」
「おそらくアジャリアの稲妻バラク。なお、未だ変形を続けております」
「この霧こそが神が望まれたものだ。アジャール軍は我らがここに居るのには気付いていたか」
「気付いていないと思われます」
「そうか……。ジャウフの街の部隊と合流して後詰と呼応して南北から挟むつもりだったが……」
――布陣もおわらず、こちらにも気付いていない、か。
 この時、軍神の脳裏で機略が閃いた。
「よし! このまま突破するぞ。アジャリアが居るとなればその命貰い受ける好機だ。ジャウフの街は開けずにいよ。アジャリア諸共アジャール軍を蹴散らしてくれる!!」
 多くの戦いにおいて奇襲は極めて有用な手段である。その生涯で負け無しといわれるサラディンは、数多の戦闘経験によってその事を熟知している。今、ベイ軍に吹く風は追い風である。

※ この物語はフィクションであり実在の人物団体とは一切関係ありません。

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