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2019年2月2日土曜日

『アルハイラト・ジャンビア』第2章_7

 タラール・デアイエはサラディン・ベイを頼って行った。ハイルの街を落とされてより二年後、身を寄せていたカイドの街のバルナウィー軍も、アジャリア自身が率いる本隊によって壊滅させられ、ゆくあてを失ったためである。確執のあったデアイエ軍とバルナウィー軍だが、アジャール軍という外圧に晒され手を結ぶもやむなしという事で、バルナウィー軍にとってもタラールという兵士を率いる将が一人増えたともいえるので、アジャール対策としては強化が出来た。が、積んだ石を一つ外せば全て崩れ去ってしまうように、ハイルの街がアジャール軍の手に落ちた事は、この地方の勢力均衡を大きく変え、勢いづいたアジャリア・アジャールを止める事は最早適わなかった。
 ハイルからサラディンのカイロまで一ヶ月弱。砂嵐が落ちてゆくタラール達を容赦なく襲う。口を覆う布を押さえる手に力が入る。アジャリアという侵略者を怨みながら、砂を噛み、彼らはカイロへ向かってひたすら重い足を前に出していった。
「戦う事が士族アスケリの常とはいえ、アジャリアの悪辣さは目に余るな」
「サラディン殿には益無き戦いになりましょうが、何卒我らネフドの士族アスケリを済度して頂きたく恥を忍んで頼って来た次第」
「我輩は戦争で益など求めておらぬ。アジャリアの侵略など神は望まぬという事をこのサラディンが思い知らせてくれよう」
 手にした鎌型斧ケペシュが地を衝き、寂とした物腰のままサラディンは静かに息巻いた。
 義人サラディンは、人道に沿わぬを善しとせぬ男である。また自信家でもある。彼自身が武で鳴らす最強の武人である上に、戦いでは一度も敗れた事がない程、軍略に長けている事も彼の自信を裏付けている。篤信故に自分は神から愛されているという自負もあった。
 砂漠を延々と旅し砂埃にまみれ、見る影も無くやつれたタラールを始めとする、これについてきたネフドの士族達の訴えを聞き入れ、これを救済する事を約束し、ベイとアジャールの剣は初めてぶつかった。同年、七歳になったバラザフは正式にアジャリアの近侍ハーディルを受命した。

※ この物語はフィクションであり実在の人物団体とは一切関係ありません。

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