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2019年1月29日火曜日

『アルハイラト・ジャンビア』第2章_3

 アジャール家のいわば外来の将であるシルバ家が、戦功をあげる事を面白く思わぬ輩も少なからずいて、彼らは陰煞いんさつの星のような存在となったが、それでもバラザフは、
 ――殺さずして得られればなお良い。
 と言って、バラザフ達子らに、頭で勝つ事の正当さを示した。まだ父しか大人を知らぬバラザフにとって、それは智の太陽だった。
「いいですか、バラザフ」
 息子や目下の者であっても、自分の言葉を見下ろすような姿勢にエルザフはしない。
「欲するという事はつまりアマルなのです。人は欲する事を止めてはいけないし、そのための努力を止めてもいけない。知恵を絞り、そして歩み続けなさい」
「では、未来を視る眼が欲しい私はどうすれば」
「未来を常に見据える他無い。未来を視る眼が欲しいという渇望が欲する物を引き寄せるのです」
「果たしてそれで叶うものなのでしょうか……」
「叶うものなのです」
 自分でも得がたい物を欲していると自覚しいるだけに、バラザフには父の方法論があまりに簡単に聞こえた。だが、父の自分への言葉は確信に満ちている事だけはよくわかる。
 父は父で息子の中に謀将としての素養だけでなく、勇将としての面も見出していた。すなわち「欲する」という、或る方向性を持った強さがそれである。

「そうだ、バラザフ。あなたにこれを渡しておきましょう」
 バラザフが手渡されたのは札占術タリーカの札であった。
「これで或る程度の未来は見えるはずです。使い方は自分で調べて習得するように。それも欲する力を鍛える修行の一つです。それから……」
 エルザフは最後に念を押すように加えた。
「占いの結果に振り回されないように。人が築く未来とは常に占いの結果を上回るのが理です。この札占術タリーカに一切左右されなくなった時、あなたは未来を視る眼を得ている事でしょう」
「心に刻んでおきます」
 そう答え、そして頭では分かってはいるものの、これで未来を知れると思ってしまうのが子供である。否、子供でなくとも、未来を知る手段を手にしてしまうと、己が万能にでもなった気になるのが人というもので、占術とは本来、老境の者でないと使いこなせるものではない。そこで垣間見た未来とは、あくまで実現性の高い事象に過ぎないのだが、これを履行されるべき契約のように勘違いしてしまうのが占者の常である。ともあれ、バラザフは占い師を幾人か訪れ教えを請い、札占術タリーカを自ら用いる事が出来るようになった。
 父の訓示をバラザフが理解出来るようになったのは、父も兄も亡くなってからになるのだが、今はまだ札占術タリーカの習熟に重きを置いている若木である。

※ この物語はフィクションであり実在の人物団体とは一切関係ありません。

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