2019年1月10日木曜日

『アルハイラト・ジャンビア』第1章_14

 アジャリアの戦法の独特なものとしてタスラム部隊がある。歩兵の懐に石膏で出来た投擲武器を持たせ、敵と遭遇したときに渾身の力でこれを投げつけるのである。
 物をぶつけられて怯んだ、また、タスラムの石膏の破片で視界が遮られた敵に槍兵が突撃をかけ、出だしの敵味方の士気に差をつける。そして士気の下がった敵はたちまちのうちに駱駝騎兵の餌食になる寸法である。
 このタスラム部隊の戦法は、部隊が偵察等において少数かつ単独で敵に遭遇したときにも有効であり、タスラムを投げた後、歩兵自身が素早く抜刀して斬り込めばよく、数で不利な場合は逃走の生存率が著しく高まる。
 駱駝騎兵を率いるのはヤルバガ・シャアバーン、ワリィ・シャアバーンの兄弟である。さらにその後ろに精鋭のアジャール騎馬隊がずらりと並んだ。
 そして、それらを援護する者として火砲ザッラーカを装備した駱駝騎兵を各所に配置した。
 アジャリアは、本陣の天幕ハイマから出て、革盾アダーガの柄を立て悠然と椅子に座った。

※ この物語はフィクションであり実在の人物団体とは一切関係ありません。

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