ファリド・レイスにアジャール軍のクウェート侵攻の報が入った。
サバーハ家と手を結んだ事で彼らの主拠点であるバスラにレイス軍の兵を置いておけたファリドだったが、これを退かせて急ぎサフワーンの街の防衛に充てた。
アジャリア軍の強兵共が押し寄せてくる。しかもそれをアジャリアが自ら率いてくるのである。兵を分散したままでこれに勝てる道理がなかった。利口な選択が出来れば傷口は小さくて済む。
折角、ファリドとの間にバスラに帰れる渡りをつけたバシャールだが、アジャリアを恐れてまだバスラに戻れていない状態である。
「まさに幻影
作戦が利いていると言えるだろう」
クウェートへ向けて進軍する道すがら、バラザフはそう考えていた。
アジャリアはサッタームにクウェートとは別の南部のカフジの街に向わせた。クウェートからは徒歩で二日程の距離である。言うまでも無くサッタームは幻影
としてアジャリアに化けている。
クウェートの中心からサッタームを離して配置したのは意味がある。
「街は無理に得ようとするな。自分の存在を誇示すれば十分だ」
クウェートからここまで南に離れていれば、そこから更に南側はすでにメフメト家の目の届く範囲に入る。つまりサバーハ軍とメフメト軍の間に幻影
であるサッタームを置く事で両者を牽制する狙いがある。無論、挟撃される危険はあるが、今のサバーハ軍にその気概は無いとアジャリアは見ていた。ここは前回の撤退で荷隊
が奇襲を受けた場所でもあった。
※ この物語はフィクションであり実在の人物団体とは一切関係ありません。
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折角、ファリドとの間にバスラに帰れる渡りをつけたバシャールだが、アジャリアを恐れてまだバスラに戻れていない状態である。
「まさに
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アジャリアはサッタームにクウェートとは別の南部のカフジの街に向わせた。クウェートからは徒歩で二日程の距離である。言うまでも無くサッタームは
クウェートの中心からサッタームを離して配置したのは意味がある。
「街は無理に得ようとするな。自分の存在を誇示すれば十分だ」
クウェートからここまで南に離れていれば、そこから更に南側はすでにメフメト家の目の届く範囲に入る。つまりサバーハ軍とメフメト軍の間に
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